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2016年4月に、電力小売の全面自由化が実施されました。それまでは、一般家庭は地域の電力会社のみとしか契約できませんでした。これに対して、2016年の電力自由化以降は、電気を使う人すべてが自由に電力会社を選ぶことができるようになっています。

このような電力自由化は、2015年頃からテレビや雑誌などのさまざまなメディアで大きく取り上げられ始めました。これは、2016年に実施された電力自由化が一般消費者に深く関わる内容だったためです。

ただ、電力の自由化自体は、1995年から段階的に進められてきており、2016年に行われた自由化の内容も、2013年には決められていました。そこで、ここでは日本における電力自由化の流れについて解説していきます。

電力自由化以前の電力事情

日本に電力会社が誕生したのは、1880年代です。これらの会社は、小規模な火力や水力による発電を行い、近所の会社や工場などに電気を販売していました。そのため、当時の日本では、多くの電力会社が存在することで、電力供給をまかなっていました。

1945年に第2次世界大戦が終戦となると、GHQ主導によって日本の再建が行われました。これによって、電力業界は北海道や東北、関東、中部、北陸、関西、中国、九州など9つのエリアに分けられました。そして、これらのエリアでは、それぞれ1社が発電や送配電、売電などの電力事業を独占して行うこととなりました。

このような仕組みは、戦後の日本復興に貢献したといわれています。というのも、競争相手がいると、企業は利益を出すことを最優先としがちです。このような状況になると、利益が出にくいことを理由に、人が少ない地域のインフラ整備が行われにくくなります。また、発電や送配電のための設備投資などを行うことにも慎重になります。

これに対して、地域独占で電力供給を行うとライバルがいないため、電力の安定供給を経営方針としやすくなります。これによって、地方への配電や設備投資が積極的に行われ、日本全国に質の良い電気が行き届くようになりました。

このように、地域独占による電力供給にはメリットがあります。ただ一方で、競争相手がいないと、価格が適正化しづらかったり経営の無駄を省こうとする動きがなくなったりするというデメリットもあります。

前述の通り、現在の日本では電力供給のための設備がすでに整えられており、全国に質の良い電気が行き届いています。そのため、地域独占によるメリットよりも、競争相手がいないことによるデメリットの方が大きくなりました。

また、1990年代には、アメリカを始めとした諸外国の電力業界を開放する動きが強まっていました。このようなことから、日本では1995年から段階的に電力自由化が推し進められてきました。

電力自由化の経緯

電力業務は、「発電」「送電」「配電」「売電」の4つに分けられます。このうち、最初に自由化されたのが発電部門です。この部門の自由化は、1995年に開始されました。これによって、国の認可を受けることで誰でも発電を行うことができるようになりました。

そして、発電事業の次に自由化となったのが売電です。売電事業の自由化は2000年3月から始まり、「特別高圧」の自由化から行われました。特別高圧とは、契約電力2000kW以上かつ受電電圧が20000V以上の契約区分のことをいいます。

このような2000年の電力自由化によって、大規模工場やデパート、高層ビルなど大口の消費者が、契約する電力会社を自由に選ぶことができるようになりました。また、これによって電力業界の小売部門に「新電力会社(PPS)」が参入しました。

その後、2004年には中規模工場やスーパー、2005年には小規模工場への電力小売部門が自由化されました。このとき自由化されたのは「高圧」と呼ばれる契約区分であり、契約電力500kW以上、受電電圧6000V以上の消費者でした。

このように、電力小売の自由化は大口の契約者から段階的に進められてきました。ただ、このような自由化によって実際に電力会社の変更を行ったのは、自由化の対象となった消費者のうち、の約3%にしか過ぎませんでした。

これは、新電力会社が電力業界に参入しづらい状況であったことや、消費者が新電力と契約することによるリスクを回避したことが原因といわれています。

例えば、新電力会社が消費者に電気を届けるためには、地域電力会社が所持している送電線を利用する必要があります。そして、送電線を利用するためには、託送料金を地域電力会社に支払う必要があります。ただ、当時の託送料金は高額だったため、電気料金値下げの足かせとなっていました。

また、電気には「溜めておくことができない」という特性があります。そのため、需要の変化に合わせて、その都度発電量を調整する必要があります。しかし、電力供給量を需要に合わせて調整することは、ノウハウや供給設備が少ない新電力会社にとって困難なことでした。

そしてこのとき、新電力会社が需要に応じて電力を供給できないと、消費者に大きな損害が出る可能性があります。そのため、このような際は、地域電力会社が不足分の電力を供給していました。

ただ、補助を受けた電力会社は供給補助を行った電力会社に高額のペナルティを支払う必要があります。

このようなことから、新電力会社が提供する電気料金が地域電力会社に比べて大きく安くなることはありませんでした。そのため、新電力会社を選ぶ消費者は多くなかったのです。

このようなこともあり、2008年に開始となるはずだった「低圧」区分における小売自由化の議論は先送りとなり、電力自由化は一時的にストップした状態となっていました。

震災の原発事故による議論再開

止まっていた電力自由化の議論は、東日本大震災での原発事故によって再開されました。原発事故はさまざまな問題を引き起こし、社会問題となりました。このような問題の中でも特に、東京電力の電力供給が追いつかなかったことによる停電は、電力業界の開放が進んでいれば防げたことであるといわれています。

そのため、このような事象の再発防止のために、経済産業省は2012年2月に「電力システム改革専門委員会」を立ち上げて制度の抜本的な見直しを行うことを決めました。

そして、この委員会が議論を重ねた末、2013年4月に「電力システム改革の基本方針」が閣議決定されました。これによって、電力自由化を進めるために、地域電力会社の解体や低圧区分の小売自由化などの実施が決まりました。

その後、2015年に電力自由化によって起こりうるさまざまな問題を解決するために、「電力広域運営推進機関」や「電力取引監視等委員会」などの運用機関が設けられました。これらの組織は、電力自由化をスムーズに進めるためのさまざまなルール作りを行いました。

そして、このようなルールに則って、2016年4月からは低圧区分に新電力会社が参入できるようになりました。これが、一般消費者が電力会社を自由に選ぶことができるようになった「電力小売の全面自由化」です。

電力自由化の今後

これまでに述べたように、電力自由化は段階的に進められてきました。そして、電力自由化は、2016年の小売自由化で終わったわけではありません。2020年には、地域電力会社から送配電部門が切り離されることが決まっています。つまり、地域電力会社の送配電部門が、発電や売電を行う地域電力会社とは別会社になるのです。

これによって、地域電力会社は新電力会社と同じ扱いになります。そのため、2020年に送配電部門の切り離しが行われると、新電力会社がさらに参入しやすくなるといわれています。

また、2020年には料金規制の経過措置が終了することが決まっています。現在は、地域電力会社の電気料金は「総括原価方式」という仕組みで決められます。

通常は、売れた値段から原価を取り除いたものが利益となります。そのため、仕入れ値の高騰などによって原価が高くなったり、競争のために価格を下げたりすると、利益額は減少します。

これに対して総括原価方式とは、あらかじめ利益を確保した上で料金設定を行います。このときの利益額は国の定めに則って決められ、会社が持つ設備などの資産額によって変動します。

そのため、総括原価方式による価格設定には、安定して利益が取れるため、設備投資を行いやすかったり会社の経営が安定して倒産リスクが低くなったりなどのメリットがあります。

電気料金は本当に下がるのか

ただ、電力の小売が全面自由化されると、電力会社同士の価格競争が起こります。総括原価方式はこのような競争の妨げとなるため、廃止されることが決まっています。これによって、電力の小売市場が完全に開放された状態となります。

とはいえ、総括原価方式が廃止されると、地域電力会社が自由に電気料金を設定できるようになります。すると、顧客や発電所が多いことによって経済力や電力供給能力が高い地域電力会社は、顧客数が少ない新電力会社よりもかなり有利になります。

このような状況下では、電力業界の正常な競争が妨げられ、小売を自由化しても地域電力会社1強となる可能性が高いです。また、急激な価格競争が起こると、競い合いが加熱することによって会社の倒産リスクが高くなります。すると、電力自由化によって消費者が不利益を被ることになります。

このようなことから、2020年までの「経過措置期間」は、総括原価方式による電気料金の規制を継続することが決まっています。この期間を設けることによって、新電力会社が地域電力会社と競う力をつけられるとされています。

そのため、2020年に経過措置期間が終了となると、地域電力会社が本格的に価格競争に乗り出すことになるため、電気料金の価格低下が起こるといわれています。

このような流れで、2020年には「電力システムに関する改革方針」で定められた「電力自由化」が完了する予定となっています。そのため、2020年以降は電力業界が活性化して、今よりも安く電気が使えるようになったりライフスタイルや信念に基づいた会社選びが行いやすくなったりすることが期待できます。

電力自由化によるリスク

ただ一方で、電力自由化には、会社が倒産するリスクが高まるといった欠点もあります。今までは倒産リスクが限りなく低かった地域電力会社も倒産する可能性が出てくるのです。

また、経過措置期間中は、電気料金は国が定めた基準以上になることがありません。ただ、経過措置期間が終わって料金規制が撤廃されると、電力会社が原料費高騰や経営難などを理由に電気料金を値上げする可能性もあります。

このようにして、電力自由化は進められてきました。そして、2016年以降はすべての消費者が電力会社を選択することとなり、その選択判断に伴う責任が求められます。そのため、電力自由化による不利益を被らないために、これまでに述べたような知識を踏まえて冷静な選択を行うことが大切です。

地域に電力を供給している電力会社の調べ方

それでは、実際に電力会社を切り替えるときにどの会社を選べばいいのでしょうか。すべての企業が全国展開で電力を販売しているわけではありません。

例えば、電力自由化を機に電力業界へと参入したKDDIとソフトバンクはともに通信会社ですが、電力供給エリアが異なります。KDDIは沖縄を除く全国に電力販売を行うのに対して、ソフトバンクの供給エリアは関東や中部、関西、北海道となっています。

このように、地域によって契約できる電力会社は限られています。そこで、自分が住んでいる地域に電力を供給している電力会社の調べ方について確認していきます。

電力比較サイトと資源エネルギー庁のホームページ

電力会社を調べようとするとき、インターネットの検索機能を使う人は多いです。例えば、東京で契約できる電力会社を探すときは、「電力会社 東京」などのワードで検索することでしょう。

ただ、このような検索では出てくる情報が偏っていたり古かったりすることがあります。例えば前述のような検索ワードだと、東京電力のホームページや比較サイトが多く出てきて他の電力会社はしばらく後に出てきます。そのため、どの会社が自分のエリアに電気を供給しているかわかりづらいです。

また、電力会社の比較サイトでは、該当地域に電力供給を行っている電力会社を一覧で確認することができます。さらに、各会社のプランから自分に最適なものが選べるため、電力会社を変更する際に有力な判断材料となります。

ただ、比較サイトの情報が最新である保証はありません。

また、これから電力の供給を開始する「供給予定」の会社が記載されていないため、検索時点での電力供給会社しかわかりません。例えば、いまの時点から半年後に電力を供給する会社があるとすると、そのような会社の情報はわからないのです。そのため、掲載されている情報を冷静に判断する必要があります。

すべての問い合わせ先は確認できない

一方で、電力を小売するためには経済産業省に申請して登録をする必要があります。そのため、経済産業省の「資源エネルギー庁」では、登録小売電気事業者の一覧をホームページ上で公開しています。

登録小売電気事業者一覧は、資源エネルギー庁トップページの「電力の小売全面自由化」の中にある「詳しくはこちら」をクリック後、「小売電気事業者一覧」で見ることができます。

また、トップページに「電力の小売全面自由化」が見つからなければ、「政策について」→「電力・ガス」→「電気料金及び電気事業制度について」→「電力小売全面自由化」→「小売電気事業者一覧」で見ることができます。

小売電気事業者一覧では、電力を小売することができる電力会社の一覧を見ることができます。この中には、電話番号や問い合わせ先、供給予定の地域、一般家庭への電力販売の有無について記載があるものがあります。

残念ながら、これらの情報の掲載は電力会社の任意となっているため、すべての会社の問い合わせ先を確認できるわけではありません。ただ、多くの会社が供給地域や一般家庭への供給有無を掲載しているため、通常の検索では出てこない電力会社を知ることができます。

また、供給エリアやホームページ、問い合わせ先などを詳しく記載している会社は、検索時点で電力販売を行っていなくても近い将来販売を開始する可能性が高いです。そのため、小売電気事業者一覧を確認することで将来のことを見据えた判断ができるようになります。

このようなことから、電力会社の変更を検討しているのであれば、比較サイトなどの利用とともに小売電気事業者一覧の確認をおすすめします。これによって詳細な知識を得ることで、変更判断の失敗を防ぐことができるはずです。