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家庭で使用するエネルギーには電気やガス、灯油などがあり、このうち電気とガスは給湯や暖房などさまざまな用途に利用されます。そして、これらはそれぞれ価格が異なるため、どちらを導入するかによって月々の光熱費が大きく変わります。

このような理由から、多くの人が新築で家を立てる際に「自宅のエネルギーをオール電化にするか否か」で悩みます。この選択は、月々の固定費だけではなく生活の利便性にも影響します。

そのような中で、2016年4月から電力自由化が始まりました。これによって、一般市民が自由に電力会社を選べるようになっています。

そこで、ここでは電力自由化以後の現在において、オール電化を導入することのメリット・デメリットについて解説していきます。

電力自由化以前におけるオール電化導入のメリット・デメリット

前述のように、自宅のエネルギーには大きく分けて「電気」と「ガス」という2つの選択肢があります。このうち、世帯でのエネルギー使用をすべて電気に統一した住宅のことを「オール電化住宅」といいます。

住宅にオール電化を導入すると、請求を1本化できるというメリットがあります。そのため、ガスの基本料金が不要になり家計の管理が容易になるため、光熱費を節約することができます。

また、オール電化住宅ではエネルギー使用時に火の燃焼が起こりません。そのため、火事のリスクが低いことや燃焼ガスが発生しないことから安全性が高いといわれています。

一方で、オール電化を導入すると、災害などでの停電時には給湯や調理、暖房などが行えなくなります。また、オール電化マンションなどでは水が出なくなることがあります。停電が長期化したり冬に起こったりすると、水や暖房が使えないことによって生命の危機に陥ることがあります。

さらに、一般的にオール電化の導入費用は高額です。そのため、オール電化によって光熱費を節約できても、初期費用分を回収できるまでには時間がかかります。

このように、電力自由化以前では、オール電化には光熱費が節約できるというメリットがある反面、さまざまなデメリットが存在していました。

オール電化は原発に依存している

2011年に震災による事故が起こるまで、原子力による発電は日本の総発電量の約3割を占めていました。原子力発電では、安価で安定した発電量が得られるとともに、地球温暖化の原因であるとされる二酸化炭素を排出しません。そのため、国と地域電力会社は原子力発電を推し進めてきました。

ただ、原子力発電には発電量を調節できないという特徴があります。そのような問題を解決するために、電力会社はオール電化住宅を推奨してきました。

というのも、一般的に電力使用量は昼間に比べて夜間の方が少なくなります。ただ、原子力発電は発電量を調節できないためこのような需要の変化に対応できず、夜間の電力が余っていました。

オール電化住宅では、安価な夜間の電力を使用して昼間の電力使用量を減らすように作られています。これによって、原子力発電による余剰電力の有効活用を行っていたのです。

ただ、2011年に原発事故が起きてから、原子力による発電は全体の2%まで減少しました。これによって、発電量の不足によって計画停電が行われ、発電コストの上昇によって電気代が値上がりしました。また、電力会社によるオール電化推進も行われなくなりました。

前述のように、オール電化は夜間の安価な電力を使用します。ただ、原子力発電が行われないと安価な夜間の余剰電力はなくなります。そのため、原発事故以前の安価なオール電化向け料金プランは電力会社が赤字になることが多いのです。

このように、オール電化住宅は原発に依存しています。そのため、オール電化住宅の今後は原発に左右されるといえます。

オール電化の今後

原発事故によって一旦休止した原子力発電所は、徐々に再稼働を始めています。また、2020年の二酸化炭素の削減量目標を達成するために、国は原子力発電所の再稼働をさらに推し進めるといわれています。そのため、オール電化向けの安価な料金プランはしばらく継続される可能性が高いです。

ただ、原子力発電所を所有しているのは地域電力会社のみです。そのため、オール電化住宅では電力自由化による価格競争の恩恵が受けられにくいです。

これを解決するために、原子力発電による電力を新規参入の電力会社に開放する動きがあります。ただ、実際に新電力会社が販売できるようになるまでにはかなり時間がかかるといわれています。

さらに、現在稼働している原子力発電所もいずれは経年によって廃炉になり、これを補うためには原子力発電所を新しく設立する必要があります。ただ、実現には高額の費用や地域住民の理解が必要不可欠です。また、原発反対の世論が大きくなれば新規設立は難しくなります。

また、現在電力自由化によってガス会社と電力契約ができるようになっています。そのため、オール電化ではない世帯でも、請求の1本化やセット割引による光熱費の節約が行えるのです。

このように、原発事故や電力自由化によってオール電化導入のメリットはかなり少なくなっています。

家の購入は何度も行えることではありません。また、住宅に導入するエネルギーの選択を誤ると、長期間に渡って損や不便が発生することがあります。そのため、今後新築で家を購入する予定がある世帯は、これまでに述べたような情報を踏まえて冷静な判断を行うことが大切です。

電力会社の切り替え:オール電化の場合

電力自由化によってさまざまな会社が電力業界に参入して価格競争が生まれています。そのため、電気料金が下がることによって家計の負担が少なくなるといわれています。

実際に、新規に参入した会社の基本的な電気料金は従来の電力会社のものよりも安価です。ただ、オール電化を導入している場合、必ずしも電気料金が下がるとはいえません。

電力自由化以前は、各電力会社がオール電化用のプランを提示していたため、ガスとの併用に比べて光熱費が安くなっていました。これは、大手電力会社が持つ原子力発電所の特性によるものです。

原子力発電では、燃料が核分裂する際に発生する熱を発電に利用します。核燃料の分裂反応は長期に渡って継続し、一度始まると止めることができません。そのため、原子力発電は発電コストが安い代わりに発電量の調節がしづらいです。

通常、夜間は電力の消費量が低下します。ただ、前述のとおり原子力発電では、消費しないからといって発電を控えることができません。そのため、夜間には多くの電力が余ってしまいます。

オール電化は、このような余った電力を活用するのに有効でした。そして、オール電化住宅は電力消費量が多いため電力会社にとって優良な顧客となります。そのため、各電力会社は夜の余剰電力を利用してもらうために、通常に比べてかなり割安なオール電化向けのプランを提示して普及を進めていたのです。

電力自由化以後のオール電化住宅事情

前述のように、電力自由化によって多くの会社が電力業界に参入しており、さまざまな料金プランが発表されています。今後、電力会社同士の競争が激しくなるにつれて安い料金プランが増えていくと考えられます。

ただ、これら料金プランの多くは、従来のオール電化向け料金プランより割高です。これは、もともとオール電化向けの料金プランがかなり安価に設定されていたためです。

前述のように、原子力発電は他に比べて発電コストがかなり安いという特徴があります。2011年の東日本大震災による原発事故によって、原子力発電による電力供給率はかなり低下しました。ただ、安価な電力を安定して供給することを目的に、各地で原子力発電所が再稼働しています。

これによって、原子力発電所を所有している地域の大手電力会社は安価な電力を販売できるようになります。特に、前述のようにオール電化向けの安価な料金プランを維持しやすくなります。

新規会社はオール電化向けプランを作りにくい

一方で、原子力発電所を持たない新規参入の電力会社は、地域の電力会社に比べて発電コストが高くなります。そのため、新電力会社が地域電力会社よりも安い、オール電化向けのプランを作ることは困難です。

このようなことから、オール電化世帯が電力会社の切り替えによって電気料金を節約することは難しいです。そのため、オール電化世帯は電力会社の変更をしばらく様子見するべきといえます。

ただ、新電力会社に原子力発電による電力を開放する動きも出ています。新規参入会社が原子力による電力を販売できるようになると、新規参入会社から格安のオール電化向け料金プランが発表される可能性は高くなります。

そのため、オール電化世帯が電気料金を損しないためには、発表されるプランを敏感にキャッチする必要があります。これまでに述べたようなポイントを踏まえ、日々の情報に敏感になって賢く判断しましょう。