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日本では、さまざまなエネルギーによって発電が行われています。このうち、主力となっているのは火力や水力、原子力などです。

火力や水力などによる発電の歴史は古く、世界では1800年代から利用されてきました。そのため、これらによって電気を作る仕組みは比較的簡単です。

これに対して、世界で初めて原子力発電所が作られたのは、第二次世界大戦終結後である1954年です。そして、原子力は、火力や水力などに比べて高度な手段によってエネルギーを発生させています。そのため、原子力がどのようにして発生するかを知らない人は少なくありません。

そして、原子力は日本の安定した電力供給を支えている一方で、さまざまなリスクがあります。そのため、今後の生活や世界環境のためにも、消費者自身が発電の方法を理解する必要があります。

そこで、ここでは原子力発電の仕組みについて解説していきます。

原子力とは

原子力発電は、原子の力を利用して発電します。原子とは、物質を構成している粒子のことです。この世の中にあるすべてのものは、多数の原子が集まることによって作られています。

原子は、約1億分の1cm程度の粒です。また、その中心には「原子核」があります。そして、原子核を支点として、マイナス電気の性質を持つ「電子」が飛び回っています。

原子核は、プラス電気の性質を持つ「陽子」と、電気の性質を持たない「中性子」で構成されています。通常状態での原子では、陽子と電子は同じ数だけ存在しており、電気の性質がプラスマイナスゼロとなっています。

陽子や電子などが電気の性質を持つ粒子であるのに対して、中性子はこのような性質を持ちません。また、陽子の数は同じ原子の種類(元素)であれば一定ですが、中性子は同元素であっても数が一定ではありません。

発電に使われている原子力とは、このような性質を持つ粒子である原子核が分裂することによって発生するエネルギーのことをいいます。原子の核分裂は、原子核が中性子を取り込むことによって起こります。

例えば、ウランなど核分裂が起こりやすい原子の原子核に中性子を当てると、原子核が中性子を吸収します。すると、原子核が分裂して、もともとの原子とは異なる種類の原子が2つ生じます。

具体的には、陽子を92個持つ元素であるウランがこのような反応によって核分裂すると、「39の陽子を持つ原子」と「53個の陽子を持つ原子」や、「36個の陽子を持つ原子」と「56個の陽子を持つ原子」など、ウランとは異なる2つの原子に分かれます。このような、核分裂によって生じた物質を「核分裂生成物」といいます。

また、このような核分裂の際には、放射線や熱エネルギー、2~3個の中性子などが生じます。そして、発生した中性子がウランなどの原子核に当たり、核分裂が連鎖的に起こって大量の熱エネルギーが発生します。原子力発電は、このようにして生み出されたエネルギーを利用して発電しています。

原子力発電の燃料

原子力発電では、原子が核分裂した際に発生する熱で蒸気を作ります。そして、蒸気がタービンを回すことによって発電を行います。

前に述べたような核分裂反応は、すべての原子で起こるわけではありません。そのため、原子力を利用するためには、ウランやプルトニウムなどの核分裂が起こりやすい物質を使う必要があります。

このような物質のうち、日本において、多くの原子力発電所で使用されている燃料はウランです。ただ、ウランの種類によっては、核分裂が起こりにくいものがあります。

というのも、ウランが持つ中性子の数にはバラつきがあります。例えば、同じ92個の陽子を持つウランであっても、所持する中性子が143個である「ウラン235」や146個である「ウラン238」があります。

この2つのウランのうち、核分裂が起こりやすいのはウラン235です。ただ、地球上に存在しているウランのほとんどがウラン238です。具体的には、採取したウラン資源のうち、99%以上が核分裂を起こしにくい性質を持っているということになります。

そのため、原子力発電で利用されるウラン資源は、ウラン235の比率を3~5%まで高めたものが使用されます。このようにして作られた発電の燃料に使用できるウランを、「濃縮ウラン」といいます。これに対して、濃縮ウランを作った際に生じるウラン235の比率が低いウランを「劣化ウラン」といいます。

また、原子力発電には、プルトニウムが使用されることもあります。プルトニウムも、ウランと同様に核分裂を起こしやすい物質です。また、プルトニウムの中にも核分裂を起こしやすいものと起こしにくいものがあり、原子力発電で利用されているのは「プルトニウム239」です。

プルトニウムは、天然で存在している量がかなり少ない物質です。ただ、プルトニウム239は、ウラン238が中性子を吸収することで生成されます。そのため、原子力発電に利用できないウラン238は、プルトニウムに加工することによって燃料となります。

前述の劣化ウランは、ウラン235の比率が低いため、ウラン238の比率が高い状態になっています。そのため、劣化ウランは加工されてプルトニウムとなり、原子力発電の燃料に利用されることがあります。

原子力発電の仕組み

前述のように、核分裂の連鎖が起こると、大量の熱エネルギーが発生します。ただ、核分裂の際に生じる中性子は高速で原子核から飛び出るため、そのままでは分裂反応が起こりません。そのため、原子力を利用するためには、中性子のスピードを落とす必要があります。

日本におけるすべての原子力発電所に採用されている「軽水炉型」では、このような減速材に水が使用されています。そのため、軽水炉型の原子力発電所では、ペレット状に固められた燃料が大量の水に浸かった状態になっています。

さらに、このような水は、冷却材の役割も果たしています。前述のように、燃料における核分裂反応の連鎖が始まると、次々と大量の熱が発生します。冷却材は、このような熱を発電に利用する働きを担っています。

また、原子力を利用するためには、出力の調整を厳密に行う必要があります。というのも、前述のように、ウランが核分裂すると2~3個の中性子が飛び出ます。このようにして生じた中性子すべてがウランに当たって核分裂を起こすと、反応がねずみ算式に発生します。

すると、核分裂の連鎖が高速で起こり、核分裂によって発生した熱が一気に増大してエネルギーが暴走し始めます。そして、最終的には多くなりすぎたエネルギーが爆発を起こします。このようなことが起こると、発電所が崩壊して生物に毒性がある放射性物質をばらまかれるため、周辺地域に済む人の生活や生態環境に悪影響が出ます。

このようなことから、原子力発電所では、原子核から飛び出した数個の中性子のうち、1つだけが他のウランに当たるように調整されています。具体的には、発生した中性子の1~2個をウラン235以外の物質に吸収させます。この役割を担っているのが、燃料と燃料の間に差し込まれる「制御棒」です。

制御棒は、銀などの中性子を吸収しやすい素材でできています。そして、これを抜き差しすることによって反応を起こす中性子の数を調整し、出力を変化させています。例えば、原子炉を停止させるときは、燃料の間に制御棒を深く差し込んで中性子を吸収させ、核分裂反応が起こらないようにします。

このようにして核分裂によって生じる中性子を1個にして、安定した連鎖反応が起こる状態を「臨界」といいます。原子力発電は、このようにして臨界状態が安定して持続させられる仕組みになっています。

原子炉の種類

原子炉は、減速材や冷却材などの種類によっていくつかのタイプがあります。前述のように、日本にある原子炉はすべて軽水炉です。これは、減速材や冷却材に一般的によく使われる「普通の水」を使用するものです。

これに対して、減速材に黒鉛を利用する方式を「黒鉛炉」といいます。黒鉛炉は、原子力発電が開発された初期によく使われていたタイプです。

黒鉛炉は中性子を吸収する量が水に比べて低いため、燃料として使うウランを濃縮する必要がありません。そのため、鉱山で採集したウランをそのまま燃料として利用することができます。

ただ一方で、軽水炉よりも出力の調整が難しく、発電量も少ないというデメリットがあります。また、黒鉛炉では、核分裂後に生じる物質が核兵器に利用できるという危険性もあります。

さらに、1986年に甚大な事故を引き起こした旧ソ連におけるチェルノブイリの原子力発電所は、黒鉛炉でした。このようなことから、黒鉛炉の数は徐々に減少し、安全性に優れているとされる軽水炉が世界でもっとも利用されている原子炉となっています。

そして、軽水炉は冷却材である水の利用方法によって2つのタイプに分けられます。以下に、その特徴を述べていきます。

沸騰水型軽水炉

前述のように、核分裂を起こす燃料は大量の水に浸かっています。この水が温められて蒸気となり、直接タービンを回す方式を採用しているのが「沸騰水型軽水炉(BWR)」です。

沸騰水型軽水炉では、温められた水が直接タービンを回すため、原子炉の構造が単純です。タービンを回す蒸気が核燃料によって直接温められているため、放射性物質を含んでいます。つまり、放射性物質を含んだ水が原子炉内すべてを巡ることになります。そのため、この方式では、放射性物質を漏らさないために、原子炉内すべての器材に工夫を施す必要があります。

加圧水型軽水炉

前述のように、沸騰水型軽水炉は温められた水が蒸気となって直接タービンを回します。一方で、「加圧水型原子炉(PWR)」では、熱せられた水(一次冷却水)が別の水(二次冷却水)を温めます。そして、二次冷却水が蒸気となってタービンを回します。

具体的には、一次冷却水は核分裂の熱によって温められたあと、加圧器によって圧力をかけられます。そして、高温・高圧となった一次冷却水は、蒸気発生器に溜められている二次冷却水を熱して蒸気にします。このとき、一次冷却水は蒸気発生器内にある細い管を通るため、二次冷却水には触れません。

このように、加圧水型原子炉では放射性物質を含んだ水とタービンを回す水が別になっているため、放射性物質が原子炉内を巡ることがありません。そのため、加圧水型原子炉は、沸騰水型軽水炉に比べて手入れが容易で事故時のリスクが低いという特長があります。このようなことから、世界では加圧水型原子炉が主流となっています。

前述のように、核分裂の際に発生するエネルギーは膨大です。実際に、原子力発電所で使用されるウラン燃料は、1立方センチメートルで約2500kWhもの電力を生み出すことができます。これは、一般的な家庭で使用される電力の8~9ヶ月分に相当します。そのため、原子力による電力は安価です。

また、原子力発電には、地球温暖化の原因物質であるとされる二酸化炭素などの排出を伴いません。そのため、温室効果ガスを発生させる発電方法である火力発電の代わりに稼動させると、地球温暖化防止の効果があるといわれています。

ただ、原子力発電所には、事故が起こると周辺地域が放射性物質に汚染されるというリスクがあります。また、日本では、原子力発電によって発生する高レベル放射性廃棄物の廃棄場所が確定していません。

高レベル放射性廃棄物は、放射線を数万年出し続けるといわれています。このような放射線は遺伝子などを壊す力があるため、人体や動植物などに悪影響を及ぼします。そのため、全国の自治体が廃棄場所となることを拒否しています。

このように、原子が持つエネルギーには多くのメリットがあり、世界の電力供給を支えています。一方で、原子力を利用することには人間の生活や世界の環境などに悪影響が生じるリスクを伴います。そのため、消費者それぞれが原子力発電についての知識を深め、その是非を冷静に判断することが大切です。