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現代の日本では、全国どこでも安定した電力を使用することができます。このような電力事情を支えている要因の1つが、各地に設置された発電所です。

そして、このような発電所にはさまざまな種類のエネルギー源が採用されています。これは、それぞれの発電方法にメリットとデメリットの双方が存在しているためです。また、これらのデメリットを相殺するために、複数種類のエネルギー源を採用して発電が行われています。

このように数ある発電方法のうち、水力による発電の歴史は古く、現在でも日本の電力供給を支えています。そして、近年では水力発電の注目度が再び上がり始めています。

そこで、ここではさまざまな発電方法の1つである水力発電について解説していきます。

水力発電の歴史

水力発電は、水が上から下へと流れるときのエネルギーを利用する発電方法です。水力発電には、水の流し方によっていくつかの種類があります。そして、そのどれもが、流水で発電用の水車を回すことによって電気を作ります。

日本で一番初めに作られた発電所は、1887年に作られた火力発電所でした。続いて、翌年7月に日本で初めての水力発電所が稼動し始め、その後多くの会社が水力発電設備の建設を行いました。

そして戦後、国の復興のために日本の電力需要が大きく急伸しました。これをまかなうために、大手電力各社は高出力の水力発電設備である大型ダムの建設を次々と行いました。

そして、1956年には、黒部川第4発電所の開発のために大型ダムの建設が行われました。この事業は多くの犠牲者を出し、ダム建設が社会問題となるきっかけとなりました。のちに「黒部の太陽」というタイトルで実写映画化もされ、多くの人にその事実を伝えています。

とはいえ、水力発電は水の流れる力を利用する発電方法です。そのため、国土を海に囲まれ豊富な水がある日本では、各地で採用しやすい発電方法でした。このようなこともあり、1950年代までは「水主火従」と呼ばれ、水力発電が日本における電力供給の主力でした。

ただ、日本が高度成長期を迎えると、外国から安く化石燃料を仕入れることができるようになりました。

水力発電には、「発電量の調整が難しく天候にされやすい」というデメリットがあります。これに対して、化石燃料をエネルギー源とする火力発電は、燃料さえ確保できれば安定して発電することができ、燃料量を変えることで容易に発電量を調整することができます。

このようなことから、1960年頃から全国的に火力発電の導入が進んでいきました。そして、1962年には発電電力量で火力発電が水力発電を上回りました。これによって、水主火従の時代が終わり、「火主水従」と呼ばれる時代がやってきました。

そして現在でも、日本における発電の主力となっているのは火力発電です。ただ、火力発電は化石燃料を燃やすため、二酸化炭素など温室効果ガスの排出を伴います。これに対して、水力はこれらの排出がない「再生可能エネルギー」です。

実際に、水力発電では、発電所の建設から廃棄までにおいて、発電量1kWhあたり0.011kgの二酸化炭素しか排出しないという試算があります。このような値を、「ライフサイクルCO2排出量」といいます。

これに対して、火力発電のライフサイクルCO2排出量は、燃料によって差はありますが、発電量1kWhあたり0.474~0.943kgです。また、太陽光は0.038kg、風力は0.025kgとなっています。そのため、水力発電は他のエネルギーと比べて二酸化炭素の排出量がかなり少ない発電方法といえます。

また、化石燃料の資源を持たない日本では、火力発電のための燃料を輸入で調達する必要があります。輸入に頼るということは、その分だけ日本のお金が海外に流れ出るということです。

このようにして流れ出たお金は、輸出によって取り戻すしかありません。ただ、新興国の発展やグローバル化によって日本の輸出業は厳しい状況に置かれています。このようなことから、火力発電を行うことは日本の経済状況を悪化させるリスクを抱えているといえます。

これに対して、水力発電は純粋な国産エネルギーです。そのため、水力発電によって日本がお金を失うことはありません。

このようなことから、近年水力発電を再評価する動きが高まっています。また、2011年の原発事故によって全国の原子力発電所の多くが稼動を休停止しています。このような理由からも、水力発電による電力供給量の増加が期待されています。

ただ、大出力の水力発電所を建設するためには、大型のダムを作る必要があります。そして、ダム建設には自然破壊を伴うことにくわえて、多額の費用がかかります。そのため、今後日本で大規模な水力発電所を作ることは困難だといわれています。

一方で、日本には山や川が多いため、小規模な装置による水力発電は個人でも行うことができます。また、小規模な水力発電は、発電設備の仕組みが単純であるため、設置コストや維持費用が安価です。そのため、近年では、農業用水路などを活用した小水力発電が注目を集めています。

このような水力発電が増えると、山間地などの過疎地でも安定した電力が利用できるようになります。また、火力発電所による電力供給量が少なくなるため、地球温暖化ガスの排出量が減ります。このようなことから、今後は小水力発電による電力供給が増えていくといわれています。

水力発電の種類

前述のように、水力発電にはいくつかの種類があります。以下に、それぞれの特徴について述べていきます。

流れ込み式

流れ込み式とは、流れる川の水を利用する水力発電です。この発電方法では、流れる川の途中に発電機を置くだけで発電が行えます。そのため、流れ込み式による水力発電は、日本で発電が始まった当初から各地で行われてきました。また、川が流れていれば発電できるため、前述したような個人による発電のためにも活用されています。

また、流れ込み式による発電では、流水によって常時電気が作られるため、発電コストがかなり低くなります。そのため、この方式で作られた電気は、価格が安くなります。

一方で、水力発電で発電量を調整するためには、流れる水の量を調整しなければいけません。ただ、河川の水量を自由に変えるためには、調整用の池や装置を作る必要があるためコストがかかり、流れ込み式のメリットである発電コストの低さが相殺されます。

そのため、後述のように、このような調整用の装置を備えた水力発電は流れ込み式と区別されています。そして、流れ込み式による水力発電は、常に100%の稼動状況を維持しています。

このようなことから、流れ込み式による水力発電は「ベースロード電源」に採用されています。ベースロード電源とは、日本における電力供給の基礎を支えるエネルギー源です。

ベースロード電源には、発電コストが安く、常に出力100%で稼動するエネルギー源が採用されます。つまり、流れ込み式による水力発電は、日本における電力供給の基礎を支えているということです。

調整池式

前述のように、水力発電で発電量を調整するためには、水をせき止める必要があります。調整池式は、川の途中に小さなダムを作ることによって発電量を調整できるようにした水力発電です。

調整池式による水力発電では、電力需要量の少ない夜間や週末にダムへ水を貯め込みます。そして、日中などに電力の需要量が伸びたときには、水を放出して発電を行います。

調整池式による発電は、放出する水の量を調整することで発電量を変えることができます。このような発電量の調整は、天候や電力の需要量に合わせて1日から1週間ほどの期間で行われます。そのため、この方式による水力発電は、「ピーク電源」に採用されています。

ピーク電源とは、発電量の調整が容易で急な電力需要にも対応できるエネルギー源のことをいいます。これによって、夏や冬の日中など電力需要が高まる時期の電力供給をまかなっています。

そのため、調整池式による水力発電は、発電量の調整を行うことによって日本の安定した電力供給を支えているといえます。

貯水池式

前述のように、調整池式は川の水をせき止めて小規模のダムを作る発電方法です。これに対して貯水池式は、調整池式よりも大きなダムを作って大量の水を貯め込みます。そのため、貯水池式の出力は調整池式に比べて高く、多くの電気を作ることができます。

貯水池式では、雪解けや梅雨、台風などによって水量が増えやすい時期にダムへ水を貯め込みます。そして、水量が少なくなる夏や冬には、ダムへ水を補給することによって水量を調節し、1年を通じて発電を行います。

このようにして貯め込んだ水は、夏や冬などにおける電力需要のピークに放出されます。そのため、貯水池式による水力発電は、調整池式と同様にピーク電源に採用されています。

揚水式

揚水式とは、2つの調整池を利用した発電方法です。この方式では、発電所の上流と下流に調整池を作ります。そして、昼間などの電力消費量が多いときに、上部の調整池から下部の調整池へ水を流して発電します。

その後、電力消費量が少ない夜間に、電力を使って下部の調整池から上部の調整池へ水を引き上げます。このときに使われる電力は、火力や原子力による余剰電力です。

というのも、電気には溜めておくことができないという特徴があります。また、原子力発電所は、安全上の理由から出力の変更を行うことができません。そのため、原子力発電所が稼働すると、電力需要量の落ちる夜間に電力が余ります。

このようにして余った電力を揚水式の水力発電所に利用すると、無駄な電気を減らすことができます。そのため、揚水式の水力発電所は、原子力発電所とセットで作られてきました。

揚水式による発電は、放水の量を変えるだけで出力の変更を行うことができるため、発電量の調整が容易に行なえます。一方で、一度下に落ちた水を上に引き上げる作業にコストがかかるというデメリットがあります。

さらに、揚水式は他の方式に比べて構造が複雑で、発電所の建設にもコストがかかるため、この方式による電力は高価になります。このようなことから、揚水式による電力はピーク電源に採用されています。

また、前述のように、水力は再生可能エネルギーです。ただ、揚水式による発電を行うためには、火力や原子力による電気を必要とします。そのため、揚水式による水力発電は、純粋な再生可能エネルギーとはいえないという側面もあります。

これまでに述べたように、水力発電は日本の安定した電力供給を支えている発電方法であり、自然環境に優しい再生可能エネルギーです。

2016年の電力自由化以降、一般消費者が発電方法を支持することができるようになりました。このような支持によって水力発電による電力供給が増えると、消費者はがより安くてクリーンな電力を使用できるようになります。そのため、家計や未来の日本のためにも、普段使用している電力の発電方法を把握して自分の選択に責任を持つことが大切です。