7ead2e2c89044795550d6a359e907a15_s

日本では、さまざまな方法によって電気が作られています。近年、このような発電方法の中でも、再生可能エネルギーによる発電が注目を集めています。

再生可能エネルギーとは、自然界に常に存在していて、一度消費しても比較的すぐに再利用できるエネルギーのことをいいます。例えば、地球に降り注ぐ太陽光や、日常的に吹いている風などがこれに当たります。そして、これらを利用した発電方法である太陽光発電や風力発電などは、世界的に多く導入されています。

また、近年の日本では、地球の中に存在している熱を利用した発電方法である「地熱発電」が注目を浴びています。これは、日本が地熱発電を行うための資源を大量に持つ国であるためです。

そこで、ここでは地熱発電について解説していきます。

地熱発電とは

日本は、全国各地で温泉が湧いています。温泉とは、地中に眠る鉱水が地下の熱によって温められたものです。地熱発電は、このような地下の熱を利用して発電を行います。

地球は、中心部に向かうほど温度が高くなります。そのため、掘り続けることができれば、地球上のどこでも熱源を採集できるといえます。ただ実際には、人間が掘ることができる深さには限りがあり、地中の熱を利用できる箇所は限定されています。

このような、エネルギー源として利用できる地中の熱源を「地熱」といいます。そして地熱は、活火山の近くで採集することができます。そのため、地熱の資源量は活火山の数と相関関係にあるといえます。

前述のように、日本にはたくさんの温泉があります。これは、日本に活火山が多く、地熱資源が大量に存在していることを示しています。実際に、日本は世界第3位の活火山保有国であり、その数は100を超えています。そして、これらが持つ地熱資源を利用すると、約2万MWの発電ができるといわれています。

地熱発電の特徴

現在、日本における電力供給の主力は火力発電です。火力発電とは、石炭や天然ガスなどの化石燃料を燃やして電力を得る発電方法です。そのため、火力発電を行うと、地球温暖化の原因物質といわれている二酸化炭素が発生します。これに対して地熱発電では、地下に眠る熱を利用するため温室効果ガスの排出を伴いません。

実際に、地熱発電のライフサイクルCO2排出量は、0.013kg・CO2/kWhというデータがあります。これに対して、火力発電のライフサイクルCO2排出量は、石炭火力が0.943kg・CO2/kWh、天然ガス火力が0.599kg・CO2/kWhとなっています。

ライフサイクルCO2排出量とは、発電所の建設から廃棄までの間に発生する二酸化炭素量の指標です。つまり、地熱発電所が排出する二酸化炭素量は、建設などによって発生するものを含めても火力発電より大幅に低いのです。そのため、火力発電所の代わりに地熱発電所が稼動すると、地球温暖化の抑制効果が期待できます。

また、日本では、火力発電の燃料調達のほとんどを海外からの輸入に頼っています。そのため、火力発電を行うと、その分だけ海外にお金を支払う必要があるため、日本の資金力が低下します。

さらに、火力発電は国際情勢の影響を受けやすいです。例えば、1970年代のオイルショックのようなことが起こると、電力価格が高騰したり発電のための燃料調達が行えなくなったりします。

これに対して、地熱は純国産エネルギーです。そのため、発電のために海外へお金を支払う必要がありません。したがって、地熱発電は日本の資金を減らさないとともに、国際情勢が悪化しても安定した価格の電力を供給できます。

また、化石燃料は人間の手で作り出すことができないため、資源の量に限りがあります。一方で、地熱資源は活火山の活動が終わるまで利用することができます。

前述のように、日本は膨大な地熱資源量を保有しています。そのため、地熱は化石燃料に比べて、かなりの長期間において日本で消費するエネルギーをまかなうことができます。

ただ、前述のように、地熱資源は活火山の近くにあります。そして、このような所の多くは国定公園や国立公園に指定されています。これらの場所は、近年まで国によって開発が禁止されていました。

また、地熱発電所の適地は、温泉施設の適地でもあります。そのため、地熱発電所の設立には、温泉の枯渇や品質の低下を危惧する地元の住民からの反発が強いです。

さらに、地熱発電所を作るためには熱源を掘り当てる必要があるため、調査期間が長期に及びます。そのため、地熱発電所は計画から建設までに10年以上かかります。また、熱源を採集するための井戸掘りには多額のコストがかかるため、建設に膨大な費用も必要です。

このようなことから、日本は豊富な熱資源を持つにも関わらず、地熱発電の普及率がかなり低い状況となっています。実際に、全国の発電設備が持つ電力供給能力のうち、地熱発電によるものは1%未満です。

また、前述のように、地熱発電には温室効果ガスの排出を伴いません。ただ、地熱を採集するための井戸からは、熱以外に火山性ガスなどが発生することがあります。

そして、このようなガスには、二酸化炭素が含まれていることが多いです。そのため、地熱発電所の位置によっては、火力発電所と同量程度の二酸化炭素を排出することがあります。

このように、地熱発電にはさまざまなメリットがあります。その一方で、発電所を建設するためには、多くの課題を解決する必要があるのが現状です。

地熱発電の歴史

世界で初めて地熱発電が行われたのは、1900年代のイタリアだといわれています。そして現在では、アメリカやフィリピンが積極的に地熱発電を導入しています。

アメリカは世界第2位の活火山保有国であり、保有地熱資源量は23000MWe程度といわれています。そのため、アメリカでは、火山が多いカリフォルニア州での普及がかなり進んでいます。なお、熱エネルギーから変換された電気エネルギーは We という単位で表されます。Wはワット、e は electric(電気)を表し、Mは百万(million)を表します。

また、フィリピンの活火山の保有数は日本の半分程度であり、地熱資源量も6000MWe程度です。ただ、フィリピンの地熱による発電容量は世界第2位の水準であり、フィリピン国内における総発電量の約25%をまかなっています。

これらの国が日本に比べて地熱発電が普及しているのは、温泉文化がないためだといわれています。というのも、これらの国では、入浴時に湯船に浸かるということは一般的ではありません。

通常、アメリカでは自宅にバスタブがあってもひんぱんにお湯に浸かることはありません。また、フィリピンの一般的な住宅には、バスタブ自体がありません。そのため、これらの国には温泉需要がなく、地熱の主な利用先が発電に限られています。

これに対して、日本では地熱発電が開発されるかなり前から、熱を利用した商業である温泉業が発展していました。そして現在では、一大産業となっています。そのため、日本にとっての地熱は、発電のためのエネルギー源ではなく、温泉のための熱源という側面が強いのです。

このようなこともあり、電力会社は地熱発電の研究や導入に消極的でした。また、さまざまな再生可能エネルギー発電のうち、国が導入を推し進めていたのは主に太陽光発電でした。そのため、地熱発電の普及を促す制度が作られず、国内で地熱発電を研究する人はほとんどいませんでした。

ただ、2011年に東日本大震災によって原発事故が起こると、再生可能エネルギーの1つとして地熱発電が注目を浴びるようになりました。そして、2012年には国定公園や国立公園の開発規制が緩和され、地熱発電による電力の買取制度も開始となりました。

そのため、2016年には全国各地で地熱発電の開発が進められており、次世代のエネルギーとしての期待が高まっています。

地熱発電の仕組み

前述のように、地熱発電は地中の熱を利用して発電を行います。このような熱は、地下1000~3000mに存在している「地熱貯留層」まで井戸を掘ることによって採集します。

地熱貯留層とは、地中のマグマによって暖められた蒸気や熱水が溜まっているところのことです。そして、このような蒸気や熱水のことを「地熱流体」といいます。

地熱発電には、地熱流体の利用方法によって主に3つの方式に大別されます。以下に、それぞれの種類と特徴を述べていきます。

ドライスチーム

ドライスチーム」は、地熱貯留層に溜まっている地熱流体に多くの蒸気が含まれているときに利用される発電方法です。この方法では、取り出した地熱流体から熱水を取り除き、採集した蒸気でタービンを回して発電します。

ドライスチームにおける地熱発電の設備は比較的単純であるため、他の方式に比べて導入コストが安価です。ただ、蒸気の多い地熱流体を掘り当てる必要があるため、この方式の地熱発電所を建てられる場所には限りがあります。

フラッシュサイクル

地熱発電では、地熱貯留層から取り出した地熱流体に多くの熱水が含まれている場合、気水分離器を利用して蒸気と熱水を分ける必要があります。そして、このようにして分離した蒸気でタービンを回して発電を行います。このような発電方法を「フラッシュサイクル」といいます。

分離して余った熱水は、地中深くに戻されたり、蒸気にしてタービンを回すことに利用されたりします。このうち、熱水を地中に戻す方式を「シングルフラッシュサイクル」、蒸気にして利用する方式を「ダブルフラッシュサイクル」といいます。

ダブルフラッシュサイクルでは、まず取り出した熱水の圧力を下げます。すると、減圧された熱水は蒸気となり、タービンを回すことができるようになります。そのため、ダブルフラッシュサイクルは、シングルフラッシュサイクルに比べて高出力が可能になり、地熱エネルギーをより効率よく利用できます。

ただ、ダブルフラッシュサイクルを行うためには減圧器を設置する必要があるため、シングルフラッシュサイクルよりも設備が複雑になります。そのため、発電所の設置コストがシングルフラッシュサイクルよりも割高になります。このようなことから、現在の日本では、シングルフラッシュサイクルによる地熱発電所が多いです。

バイナリーサイクル

地熱貯留層に溜まっている地熱流体は、そのまま発電に利用できる品質であるとは限りません。そのため、地熱流体の温度や圧力などが低い際は、「バイナリーサイクル」方式によって発電が行われます。

バイナリーサイクルでは、水よりも蒸気になりやすい物質を利用することで発電を行います。例えば、水は1気圧のときに100℃で沸騰して蒸気となります。これに対してアンモニアは、同じ条件下で-33.34℃で気化します。

そのため、地熱流体の温度などが低く蒸気を作れなくても、地熱流体の持つ熱でこのような物質を暖めると発電を行うことができます。バイナリーサイクルは、このような方法で発電する方式です。

前述のように、掘り当てた地熱流体の品質が悪くても、バイナリーサイクルを採用すると発電することができます。さらにこの方式には、温泉との共存が可能な発電方法であるというメリットもあります。

というのも、掘り当てた温泉がそのまま入浴できる温度であるとは限りません。このようなときは、加水したり温めたりして入浴に適した温度に調節します。

そして、高温の温泉を適温にすると熱エネルギーが余ります。このような余剰な熱をバイナリーサイクルに利用すると、温泉の温度が下がって適温になるだけではなく、温泉の質や温度に悪影響を与えることなく発電が行えます。

このようなことから、近年バイナリーサイクルへの注目度が高まっており、実用化も徐々に進んでいます。そして、前述のような温泉発電が全国に普及すると、原発8基分の電力を供給できるようになるといわれています。

このように、日本の地熱発電は発展途上です。ただ今後、研究が進んで普及が加速すると、エネルギーを自国でまかなえるようになります。さらに、消費者が安定した再生可能エネルギー電力を利用できるようになります。

そして、2016年の電力小売の全面自由化によって、一般消費者が電力会社を自由に選択できるようになりました。そのため、このような未来を実現するためにも、消費者自身が責任を持って意思を表示することが大切です。