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2011年3月11日、東北地方の太平洋沖を震源とした大きな地震が起きました。これによって、福島第一原子力発電所が事故を起こし、周辺の地域や住民などに甚大な被害をもたらしました。

また、福島第一原子力発電所は、東京電力の所持する発電所です。そのため、このような事故によって東京電力が供給できる電力量が減ったため、関東地方で計画的な停電が行われました。

さらに、福島第一原発事故によって、原子力発電の安全性に対する危機感が全国的に強まりました。そのため、日本中のさまざまな原子力発電所が稼動を停止し、再稼働を見送りました。

このように、福島第一原子力発電所で起こった事故は、日本全体に大きな影響を与えました。そのため、この事故によって、原子力発電を取り巻くさまざまな環境が変化しました。

そこで、ここでは福島第一原発事故が与えた日本の原子力発電への影響について解説していきます。

福島第一原発事故とは

2011年に発生した福島第一原発の事故は、「国際原子力事象評価尺度」で「レベル7」と評価されています。国際原子力事象評価尺度とは、原子力に関わる事故における国際的な評価基準のことです。

国際原子力事象評価尺度では、「原子炉外における大量な放射性物質の漏出」と「原子力発電所の壊滅」の2点を満たした事故が、最悪評価であるレベル7と評価されます。つまり、福島第一原発事故は、これら2つを満たした「世界最悪規模の原子力事故」であるということです。

福島第一原発事故の経緯

東日本大震災が発生した当時、地震の揺れを感知した福島第一原発の原子炉は自動で運転を停止しました。また、地震によって周辺地域が停電しましたが、すぐに非常用発電機などのバックアップ電源が作動して原子炉への電力供給が再開されました。

ただ、このような電源は、地震の約50分後に福島第一原発へ到達した津波によって、故障したり海へ流出したりしました。これによって、原子炉はどこからも電力供給されない「全電源喪失状態」となりました。

原子炉では、ウランなどでできた核燃料が核分裂を行うことで高熱が発生しています。そして、このような熱は発電に使用されることによって冷やされているため、原子炉が正常に運転している状態ではほぼ一定の温度に保たれています。

ただ、このような燃料は、原子炉の運転を停止した後にも高熱を発し続けます。そのため、原子力発電所には、原子炉が止まるような非常時にも燃料を冷やすことができるように、さまざまな冷却装置が備え付けられています。

ただ、このような冷却装置のほとんどは電気で作動します。そのため、津波によって電力が供給されなくなった福島第一原発では、冷却装置が働かないことによって核燃料の温度が上がり続けました。

そして、過度に熱せられた核燃料は、燃料を包んでいる被覆管とともに容器の底に溶け落ちました。これを「炉心融解(メルトダウン)」といいます。

また、炉心融解が起こったことによって、原子炉内に大量の水素ガスが発生しました。このような水素は、酸素と触れると急激に反応して爆発を起こします。そのため、水素ガスで充満した福島第一原発の原子炉は、屋内の酸素と触れたことによって「水素爆発」を起こしました。

このような爆発は、大量の放射性物質を周辺地域にばらまきました。というのも、原子力発電は、「放射性物質」の性質を利用した発電方法です。つまり、このような物質を取り扱う原子炉内には、放射性物質が大量に存在しているということです。

このような放射性物質は、生物の細胞を壊す作用を有する「放射線」を放ちます。そのため、福島第一原発の周辺に住む住民は、放射線による健康被害を防ぐために避難を余儀なくされました。また、福島第一原発事故の周辺地域では、放射性物質に汚染されたことによって農業や漁業などが行えなくなりました。

このように、福島第一原子力発電所の事故は、日本に多くの悪影響を与えた甚大な事故です。そのため、このような事故の再発を防ぐために、日本の原子力発電にはさまざまな変化が起こりました。

福島第一原発事故以降における原子力発電の稼動状況

福島第一原発事故が起こるまで、日本政府や電力会社などは原発推進の立場にありました。これは、原子力発電にはさまざまなメリットがあるためです。

特に、「二酸化炭素など温室効果ガスの排出を伴わない」という点は、地球温暖化が国際的な問題とされている現代では大きな利点となります。そのため、「2020年までに二酸化炭素の排出量を1990年比で25%減らすこと」を国際公約とした当時の民主党政権は、これを達成するために「原子力発電推進強化策」をとりまとめました。

このような強化策には、2018年までに9基の原子力発電所を新設したり、既存原子炉の稼動率を80%程度まで上げたりすることが盛り込まれていました。そして、これによって、日本における発電電力量の40%を原子力発電が担い、温室効果ガスの排出量を減らすとしていました。

事故によって減少した稼動中の原発

前述のように、福島第一原発事故が発生する前の民主党政権は、原子力発電を推進していました。ただ、2011年に事故が起こったことにより、世論は脱原発を求める方向に傾きました。そのため、事故以前のように原発を推し進めることが困難になりました。

このようなことから、当時の民主党政権は、新たに「2030年代までに原子力発電所をゼロにする」という方針を打ち出して世論の支持を得ようとしました。

ただ、2012年の選挙で民主党は敗北し、政権が自民党に移りました。これによって、民主党が打ち出していた「原発ゼロ方針」が白紙に戻されました。

とはいえ、福島第一原発事故によって、日本における運転中の原子力発電所は徐々に減っていきました。これは、点検のために稼動を停止していた原発が、地元住民の反対によって運転再開ができなかったためです。

というのも、日本の原子力発電所は、定期的に運転を停止して施設設備の点検を行う必要があります。このような点検は年に一回行われ、前回の検査から13ヶ月を超えない時期に行うことが義務付けられています。(ただし、施設の種類によってはこのような期間が18ヶ月や24ヶ月などになるケースもあります。)

そして、このような点検が完了した後に運転を再開するためには、国の許可と地元自治体の同意が必要です。ただ、福島第一原発事故によって危機感を強めた地元住民は、原子力発電所の運転再開に反対しました。

このような反対運動は、全国各地で発生しました。そのため、稼動する原子力発電所の数は徐々に減少していき、2014年には原子力による電力供給量はゼロになりました。

政府は再び原発推進の立場へ

前述のように、2014年には日本全国の原子力発電所が商用運転を停止していました。ただ、翌年からは原子力発電所が次々と再稼働を始め、2015年には日本における発電電力量の約1.1%を占めるようになりました。そして、今後はさらに原発の再稼働が進むといわれています。

というのも、2015年に政府が発表した「2030年における日本の電源構成」では、原子力の比率が20~22%とされていました。これは、「原子力による電力が2030年時点における電力供給の1/5を担うことを目標とする」ということを意味しますつまり、政府は再び原子力発電を推進する立場となったのです。

このようなことから、2015年段階に政権を握っていた自民党の政権が続く限り、国が原発推進の方針を変えることはないといえます。そのため、日本が完全に脱原発を行うのは、かなり先のことになるといわれています。

原子力発電を取り巻く環境の変化

前述のように、福島第一原発事故は未曾有の原子力事故でした。そのため、このような事故の再発を防ぐために、原子力発電を取り巻くさまざまな組織や制度などが変化しました。

原子力規制委員会の発足

原子力発電には、発電量が多かったり温室効果ガスの削減効果が見込めたりするなどのさまざまなメリットがあります。一方で、事故が起こると甚大な被害をもたらすというリスクもあります。そのため、原子力発電を適正に運営するためには、「推進」と「規制」における両方の立場から考える必要があります。

福島第一原発事故以前は、このような原子力規制を「原子力安全委員会」と「原子力安全・保安院」がダブルチェックで行っていました。ただ、これらの組織のうち、原子力安全・保安院は、経済産業省の外局として設置されました。

ただ、このような経済産業省は、原子力を推進する立場にあります。つまり、原子力の安全を確保して規制するはずの組織が、推進する組織の内部に存在していたのです。そのため、原子力安全・保安院は、本来の役割を果たしていませんでした。

実際に、2010年に当時における保安院・耐震安全審査室の室長が、巨大津波に対する対策の必要性を訴えた際、複数の幹部にとがめられていたということが震災後に明らかになりました。

このようなこともあり、原子力を規制するこれら2つの組織は、2012年に「原子力規制委員会」が発足されるとともに廃止となりました。そして、同時に「原子力規制庁」が環境省の外局として設置され、独立行政法人の「原子力安全基盤機構(JNES)」がこれに統合されることになりました。

このような新体制の整備により、原子力の「推進」と「規制」の立場は完全に分離しました。また、原子力規制委員会は、旧体制で文部科学省が行っていた試験研究炉の安全規制や放射線のモニタリングなども行うようになりました。これによって、原子力の規制を行う組織が一元化され、より安全管理が行われやすくなりました。

前述のように、原子力発電が安全に運用されるためには、規制の立場にある組織が健全に機能する必要があります。そのため、原子力規制委員会が独立した意思決定を行うことで、福島第一原発のような事故の再発を防ぎ、日本国民がより安心して暮らせる環境に近づいていくとされています。

新規制基準

前述のように、福島第一原発事故は東日本大震災による地震や津波などによって引き起こされました。そして、これらの災害は、当時における「想定外の大きさ」でした。そのため、それまでの安全基準では、原子力発電の安全性を保障できないということが判明しました。

このようなことから、原子力規制委員会は、事故の再発を防ぐために新たな規制基準を策定しました。そして、このような新規制基準は、2013年7月から施行されました。

新規制基準では、地震や津波などの想定手法を見直し、津波による浸水の対策を導入しました。また、火山や竜巻、森林火災など他の自然災害への対策や緊急時の電源確保対策などが強化されました。

というのも、前述のように、福島第一原発が爆発を起こしたのは、全電源を喪失したことによって燃料の冷却が行われなかったためです。そのため、新基準では、東日本大震災当時よりも電気の確保ルートを増やすことが義務付けられました。

また、福島第一原発事故以前は、このような全電源喪失は起こらないとされていました。ただ、実際に電源の喪失は起こり、事故に至りました。そのため、新基準では、「起こらない」ということを前提にせず、厳しい状況が起こっても被害を最小にとどめるための対策が盛り込まれました。

例えば、新基準では、全電源喪失が起こっても炉心融解を起こさないための対策や、炉心に損傷が起こっても原子炉の格納容器を壊さないための手段を講じることを求めています。また、事故が起こったときのための設備を設置することも義務付けられました。

さらに、これまでに述べたように、原子力発電所が壊れると周辺地域に強い悪影響が起こります。また、近年では、世界各地で犯罪組織によるテロが相次いでいます。そして、このようなテロ組織に原子力発電所が狙われると、日本は甚大なダメージを受けます。

このようなことから、新規制基準ではテロや航空機の衝突などによる人災への対応が新たに盛り込まれました。これは、原子炉から100m離れたところに電源車などを保管して対処施設を常設することを義務化するものです。

このように、新規制基準では、原子力発電所をより安全に稼動するためのさまざまな対策が義務付けられています。そして、これらの基準をクリアしなければ、全国各地の原子力発電所は再稼働できません。そのため、福島第一原発事故によって、原子力発電の安全性は強化されたといえます。

40年廃炉ルール

福島第一原発事故によって、原子力発電における安全性への信頼は大きく揺らぎました。そのため、これまでに述べたように、原子力を取り巻くさまざまな環境が変化しました。そして、2012年6月に導入された「40年廃炉ルール」も、このような変化の1つです。

それまでは、原子力発電所に「寿命」は定められていませんでした。ただ、原子炉は稼働とともに老朽化し、設備がもろくなっていきます。そのため、このルールが厳密に適用されて安全に運用されるようになれば、国内の原子力発電所は減少し続けていきます。

というのも、原子力発電所を新設するためには、地元住民の理解が必要不可欠です。そして、福島第一原発事故によって、原発に反対する人が増えています。そのため、このような状況で政府が原発を推進しようとしても、新しく作ることは困難です。

さらに、日本における商用の原子力発電所は1965年から稼動を開始し、1970年代にはこのような発電所の設立が本格化しました。そのため、2030年には多くの原発が運転開始から40年を迎えることになります。

このようなことから、前述のような廃炉ルールが守られれば、2030年時点における電源構成の原子力が占める割合は、15%以下になります。

ただ、前述のように、日本政府は2030年の電源構成における原子力比率を20~22%にするとしています。つまり、この目標は、すべての原子炉を40年で廃炉することを前提としていないのです。そして、このような数値目標の実現を可能にするのが、40年廃炉ルールにおける「例外措置」です。

前述のように、2012年には「原子炉は原則40年で廃炉とする」というルールが実施されています。ただ、それと同時に、「運転開始から40年経った原子力発電所は、新規制基準に適合した延長審査に合格することで運転可能期間が最長20年延長できる」という制度が導入されました

そのため、この「例外ルール」を適用すると、運転開始から40年経った原子炉も稼動することができます。実際に、2016年には、40歳を迎えた関西電力の高浜原子力発電所1・2号機が延長を認められました。

ただ、この際に行われた延長審査内容には、多くの問題点が指摘されています。というのも、これらの原子炉の延長審査では、締め切りに間に合わせるためにいくつかの試験や手続きなどの先送りを認めたためです。このようなことから、40年廃炉ルールは実質機能しなくなるという専門家の指摘があります。

また、40年廃炉ルールの「40年」という期限には、科学的根拠がありません。前述の通り、原子炉は稼働するたびに老朽化し、安全性の問題が発生してきます。だからといって、40年を経過していない原子炉が安全であるという保証はありません。

そのため、このように法律で原子炉の寿命を定めることによって、40年が経過する前の原子炉は安全であるとされることが懸念されています。実際に、原子炉の定期検査はすでに形式主義化しているとの指摘があります。

さらに、40年での廃炉が厳密に行われるようになると、地域電力各社の経営状況が悪化する可能性があります。というのも、地域電力会社は、原子力発電によって生じた使用済みの核燃料を会社の資産として計上しています。

このような使用済み核燃料は、再処理施設で加工することによって再び燃料として利用できるようになります。そのため、地域電力各社は、たくさんの使用済み核燃料を「価値のある物」として所持し続けています。

とはいえ、日本における通常の原子力発電所は、稼働するほど使用済み核燃料が発生します。さらに、再処理された燃料を使用する新型の原子炉は、開発が難航していて実現のめどが立っていません。

このような状況下で40年廃炉ルールが遵守されると、全国の原子力発電所はいずれなくなります。そのため、電力各社が所持する使用済み核燃料の利用価値がなくなるため、資産が目減りして経営状況が悪化します。

このように、福島第一原発によって新しく導入された40年廃炉ルールは、原子力発電の安全を守るための制度です。ただ、その運用については、さまざまな問題を抱えているのが現状です。

福島第一原発事故による国民の経済的負担の増加

2011年の事故によって、福島第一原発は廃炉されることとなりました。また、これ以外にも、廃炉となる原子力発電所は次々と出てくるといわれています。

というのも、前述のように、福島第一原発事故によって原子力発電の規制基準は新しいものとなりました。既存の原子力発電がこのような基準をクリアするためには、多くの時間やお金などが必要となります。そのため、発電所によっては、再稼働することができず廃炉となる可能性があります。

ただ、原子力発電所では放射性物質を扱っています。そのため、廃炉を行うためには高度な技術が必要です。また、廃炉作業は、放射性物質の漏出などの事故を防ぐために安全性に注意して慎重に行う必要があります。このようなことから、廃炉には多額の費用が必要となります。

このような費用は、電力会社があらかじめ電気料金に上乗せして徴収していました。ただ、福島第一原発の廃炉作業は見通しが立っておらず、2016年における費用の見積もりは事故当初の2倍となっています。そのため、廃炉費用を地域電力各社のみが負担することは困難なのが現実です。

このようなことから、このような廃炉費用を「託送料金」に上乗せして徴収することが決まりました。託送料金とは、電力自由化によって参入した新電力会社が地域電力各社に払う「電線の使用料金」です。

このようにして費用を徴収することによって、地域電力各社と契約していない消費者からも廃炉のためのお金をかき集めることができます。ただ、このようにすると、新電力会社が格安の電気料金を提供することが難しくなり、価格競争に支障が出ます。そのため、新電力会社はこのような制度に反発の姿勢を見せています。

これに対して、経済産業省は、「現在新電力と契約していたとしても、それ以前は原子力による電力を使用していたのだから、国民すべてが廃炉費用を担うべき」との見解を示しています。

さらに、託送料金には、廃炉費用だけではなく賠償費用も上乗せされることが決まっています。また、今後も廃炉や賠償などに必要な費用が足りなくなった際は、託送料金で回収したり税金が投入されたりする予定となっています。

このように、福島第一原発事故以降、原子力発電の廃炉や賠償などにかかる費用は、電気を使用する消費者全員で負担することとなりました。そのため、福島第一原発事故は、国民に多くの経済的な負担を与えたということがいえます。

原発事故防止のための地震予測

前述のように、福島第一原発事故は大きな地震によって引き起こされました。そのため、この事故以降、将来の大地震を予測する動きが急速に高まりました。

地球の表面は、大きな岩の板で覆われています。このような岩の板を「プレート」といいます。そして、これらは、大陸プレートと海洋プレートに大別でき、地球表面に十数個存在しています。

海洋プレートは、1年に数センチ~10cm程度のスピードでゆっくりと大陸プレートの下に沈み込んでいきます。このとき、大陸プレートは海洋プレートに少しずつ引き込まれていきます。

そして、100~200年間にわたって引きこまれ続けた大陸プレートは、その力に耐えきれなくなって跳ね返ります。このときの衝撃で起こるのが「海溝型地震」です。東日本大震災を起こした地震は、このタイプの地震でした。

また、海洋プレートが沈み込んでいく際、大陸プレートには海側から押される力が加わります。このような圧力を外側から受けると、力の逃げ場がないためプレート内の岩層が割れてずれます。このときの衝撃で起こるのが「内陸型地震」です。そして、このような内陸型地震は、「活断層」があるところで発生します。

というのも、わたしたちが暮らしている土地は、岩盤の上に存在しています。このような岩盤が他から力が加わることによってずれた状態のことを「断層」と呼びます。

そして、活断層とは、過去数十万年の間に動いたと思われる断層のことであり、近いうちに再び動く可能性が高いものを指します。つまり、活断層とは、外側からの力によって動きやすい断層のことをいいます。そのため、大陸プレートが圧力を受けて岩盤に強い力が加わると、活断層がずれて地震が起こります。

日本列島は、4つにおけるプレートの上に乗った状態になっています。そのため、日本は、海溝型地震が発生しやすい位置に存在しています。さらに、日本を乗せる大陸プレートは、多方からプレート移動による圧力を受けるため、内陸型地震も起きやすいです。実際に、内陸型地震を起こす要因である活断層は、日本に約2000個あるといわれています。

このような地震では、震源に近い地域ほど揺れの影響が強く出ます。そのため、海溝型地震であれば、大陸プレートと海洋プレートの境目に乗っている場所がもっとも地震による被害が起きやすいといえます。

例えば、四国~東海地方の南に存在している「南海トラフ」という海溝が震源となると、中部~九州地方に強い揺れや津波などの影響が出る可能性が高いです。実際に、この地域では、過去に100~150年の間隔でマグニチュード8前後の大きな地震が起こっています。

また、内陸型地震は、活断層上にある地域が地震被害を受けやすいです。そのため、活断層の上に建てられている原子力発電所は、その安全性が問われています。

例えば、福井県敦賀市にある「もんじゅ」という原子炉は、専門家によって直下に活断層が存在している可能性が指摘されました。そして、このような活断層の存在や技術的な問題などのさまざまな理由から、もんじゅは廃炉となることが決まっています。

このように、日本に大きな影響を与える地震は、発生する箇所や時期などを特定することができません。そのため、福島第一原発事故のような事故を防ぐためには、「地震が起きやすい場所に原子力発電所を建てない」ということが大切です。そのため、さまざまな組織が原子力発電所付近の活断層について調査を行っています。

ただ、このような調査結果は、行った組織によってバラつきがあります。実際に、電力会社と原子力規制委員会は、原子力発電所直下の活断層に関して全く異なる見解を示しています。また、前述のように、日本には数多くの活断層があります。このようなことから、原子力発電所を建てるに適した「絶対的に安全な立地」を見つけ出すことはかなり困難であるといえます。

高レベル放射性廃棄物の処理に関する方針の変化

原子力発電所を稼動すると、薪や石炭などを燃やしたときの「灰」に相当する「高レベル放射性廃棄物」が発生します。このようなゴミは、長期間に渡って強い放射線を放出するため、廃棄する際には安全性に最大限の注意を払う必要があります。そのため、日本では、何重ものバリア素材で包んで地層深くに埋め立てることが決まっています。

また、このような高レベル放射性廃棄物は、扱う機会が多いほど事故が起こる危険性が増します。そのため、福島第一原発事故が起こるまでは、このような高レベル放射性廃棄物を地中に廃棄した後、再び取り出すことはないとしていました。

ただ、前述のように、福島第一原発事故は「想定外」のことでした。そのため、今後このようなことが起きたときのために、一度埋めた廃棄物を回収する可能性を含めた方針に軌道修正しました。

とはいえ、東日本大震災によって起こった原発事故によって、日本国民の多くが放射性物質の危険性を認識しました。そのため、前述のように「何かあったときには取り出す」としたものの、高レベル放射性廃棄物の最終処分場は確定する目処が立っていません。

原子力発電の今後の考え方

これまでに述べたように、福島第一原発事故によって多くの組織体制や制度などが改められました。これによって、原子力発電の安全性は増し、日本のエネルギー事情は徐々に脱原発の方向へと向かい始めています。

ただ、日本がこれまで原子力発電を行ってきたのは、多くのメリットがあるためです。また、福島第一原発事故前までは、日本の電力供給における約3割を原子力発電が担っていました。そのため、原子力発電を即座にやめることになると、さまざまな分野に悪影響を及ぼします。

とはいえ、福島第一原発事故によって多くの人が認識したように、原子力発電は「確実に安全なもの」ではありません。そのため、原子力発電の是非については、さまざまな角度から問題点を見つめ直した上で冷静に考えることが大切です。