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2016年に実施された電力小売の全面自由化によって、一般家庭や小規模の工場、商店などは自由に契約する電力会社を選べるようになりました。

電力自由化は、2015年からさまざまなメディアで報道され始めました。そのため、この頃初めて自由化が実施されたと思っている人は少なくありません。ただ、このような電力における小売の自由化は、2000年頃から段階的に行われてきました。

電力の契約には、電圧によって3つの区分があります。20000V以上の契約である「特別高圧」は、2000年に小売部門が自由化しました。また、6000~20000V未満の契約である「高圧」区分の電力小売は、2004~2005年で段階的に進められました。

そして、2016年に行われた電力自由化では、6000V未満の「低圧」区分の小売が自由化しました。これによって、電力の小売は100%自由化しました。つまり、電気を使うすべての人が電力会社を自由に選ぶことができるようになったのです。

このように自由化された低圧区分の契約種別には、一般的な家庭の契約である「電灯契約」と小規模な工場や商店などでの契約である「電力契約」の2種類があります。これらの契約では、流れる電気の質が異なります。

そこで、ここでは低圧区分における契約のうち、電灯契約と電力契約との違いについて解説していきます。

電灯契約と電力契約の違い

電気には、大きく分けて「直流」と「交流」の2種類が存在しています。直流電流とは、乾電池や自動車のバッテリーで使用されており、電圧が一定の電気のことです。

これに対して、交流電流とは一定周期で電圧が変動する電気のことをいいます。家庭や工場などで使われている電気は交流電流です。

一般的な家庭にある豚の鼻のような形をしたコンセントからは、「単相100V」の電気が流れます。単相とは、交流電流の1種で、電流の波が1本で形成された電気のことをいいます。そして、V(ボルト)は電圧の単位です。そのため、単相100Vの電気は、「1本の波で形成された100Vの交流電流」ということになります。

そして、このような単相電力を使用するための契約を「電灯契約」といいます。前述のように、単相電力は主に一般家庭で使用されます。そのため、一般家庭のほとんどが電力会社と電灯契約を結んでいます。

これに対して「電力契約」とは、「3相」の電力を使用するための契約のことをいいます。単相電力が1本の波で形成された電気であるのに対して、3相電力は3本の波で形成されています。具体的には、3相電力は「波の山が少しずつずれた単相電力3本」で作られています。

このようなことから、3相電力は単相電力に比べて電気の力が強いです。そのため、動かすために大きな力を必要とする業務用の電気製品には、このような3相電力が使用されます。つまり、3相電力を使用するための契約である「電力契約」は、業務用機器を動かすための契約なのです。

需要区分の歴史

日本における電気の需要は、照明などの「電灯」を使用することから始まりました。その後、工業で電動機などを動かすための「動力」需要が発生しました。つまり、日本で電気が使われ始めた当初は、「灯りのための電気」と「工場で機械を動かすための電気」という2種類の需要しかなかったのです。

このようなことから、家庭で照明を使うための電気を「電灯需要」、工場で機械を動かすための電気を「電力需要」と呼び、それぞれの契約区分を「電灯契約」「電力契約」としました。

ただ、現代における日本の家庭では、照明以外の家電を使用するためにも電力を使うのが一般的です。

また、電気が普及し始めた頃は、夜間に工場が稼働することはありませんでした。ただ、現在の日本における工場では、夜間も稼動するのが一般的です。そのため、工場でも照明のための電気を必要とします。

このように、電気が使われ始めた頃の需要区分は、現代の日本にそぐわなくなってきました。そのため、現在の「電灯需要」区分には、照明だけではなく「低圧・単相電力で動く電気機器」も含まれるようになりました。また、「電力需要」には、業務用機械を使用するために必要な作業用の照明が含まれました。

ただ、小規模工場や商店などの低圧における電力需要には、家庭用照明が含まれていません。これは、このような場所は一般住宅の照明と混在していることが多く、必ずしも「業務用に使用されている」とはいい難いためです。そのため、低圧の電力契約を行う事業者のほとんどが、電灯契約との併用で電気を使用しています。

電灯契約で使用できる機器

電灯契約では、単相100Vや単相200Vの電気が使用できます。家庭で使用される家電のほとんどは単相100Vで動く電気機器です。例えば、前述のような「豚の鼻状のコンセント」に刺さるプラグを持つ家電は、単相100Vで稼働します。

また最近では、200V電力で動く家電が普及され始めています。このような200V家電は、100V家電に比べて働きが力強いです。例えば、200Vエアコンは100Vエアコンよりも冷暖房機能が高く、200VのIHクッキングヒーターは100Vのものよりも加熱する力が強いです。

ただ、このような200V家電を使用するためには、200V用の配線が必要となります。つまり、前述したような「豚の鼻状のコンセント」では200V家電を使用できないのです。

単相200Vのコンセントは、単相100Vの形状とは異なり、3つ穴で顔文字に似たような形になっています。また、200V家電のプラグもそれに合わせた形状です。そのため、200V家電を使用するためには、自宅に200Vの配線を行って専用のコンセントを設置する必要があります。

日本での配線の仕組み

とはいえ、現代の日本では、ほとんどの住宅における分電盤までの配線が「単相3線式」となっています。単相3線式配線とは、3本の電線で単相の電気を送る配線のことをいいます。

この配線では、3本の電線のうち2本を使用して電気を流します。そして、使用する電線の組み合わせによって、100Vや200Vの電圧が違う電気を使用できます。つまり、単相3線式は、需要に応じて2種類の電気を流すことができる配線なのです。

このようなことから、多くの家庭では「単相200Vの電気は分電盤まで配電されている」といえます。そのため、200V家電は、分電盤から住宅内への屋内配線工事を行えば使用できるようになることが多いです。

ただ、古い住宅などでは「単相2線式」による配電になっていることがあります。単相2線式とは、2本の電線で電気を送る配線のことをいいます。

前述のように、単相3線式では、電線の組み合わせによって100Vと200Vの電気が使用できます。これに対して単相2線式では、電線が2本しかないため組み合わせが1種類しかなく、100Vの電気しか使用できません。

そのため、住宅への配電が単相2線によって行われている場合は、100Vの電気しか使用できません。そのため、200V家電を使用するためには、電柱などから単相3線による配線を引く工事が必要になり、費用と時間がかかります。

電灯契約による電気の使用

なお、1980年代までは、住宅に単線2線式による配線が行われることが一般的でした。そのため、これ以前に建てた住宅などでは、200V家電を使用するために大規模な工事が必要となることがあります。

このような工事を経て家庭で単相200Vを使い始める際に、電気の契約を変更したり電気の基本料金が上がったりということはありません。電気の使用量に応じた電気料金である「電力量料金」は、200V家電を100V家電と同じ時間稼動させると消費電力が約2倍となるため、その分だけ料金が高くなります。

ただ実際には、200V家電は出力が高いため100V家電の約半分の時間で作業を終えることができます。そのため、これらを使用した場合であっても、実際の電気料金に大きな差はないです。そのため、環境が許すのであれば、200V家電を利用した方が同程度の電気料金で便利に暮らせるようになるといえます。

このように、電灯契約では単相100Vや単相200Vの電気が使用できます。このような情報は、製品カタログや店頭、プラグの形などで確認することができます。そのため、家電購入時に自宅で使用できるかどうかが心配になったら、これらを確認して購入するようにしましょう。

電力契約(低圧)で使用できる機器

前述のように、低圧の電力契約に電灯需要は含まれません。そのため、低圧の電力契約では、電灯契約で使用できる照明や電気機器類が使用できません。このようなことから、低圧の電力契約は、電灯契約で使用できる機器以外の電気機器を稼動させることができる契約といえます。

具体的には、低圧の電力契約では3相200Vの電力が流れます。そのため、低圧電力ではこの電力で動く電気機器が使用できます。また、単相電力を使用する機器であっても、産業用の電熱器や溶接機、レントゲン装置などは電力契約で使用できるとされています。

このような3相200Vを使用するためのコンセントには、さまざまな形状があります。そのため、低圧電力契約で使用できる機器がどうかはカタログなどで確認する必要があります。

これまでに述べたように、電灯契約と電力契約では使用できる電気の質や電気機器が異なります。そのため、商店などの開店や事業所の開設によって電力契約を行う予定がある人は、適合するか否かを確認してから機器を購入するようにしましょう。