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日本では、5000万を超える世帯が電気を日常的に使っています。そして、これらの世帯に供給されている電力は、さまざまな方法によって作られています。

例えば、東京電力が販売している電力は、水力や火力、地熱などの多くのエネルギーを用いて発電されたものです。た、新電力会社が扱っている電力も同様に、いくつかの発電方法を組み合わせたものであることが多いです。

このように、日本の電力供給は特定の発電方法によって行われているわけではありません。これは、電力の安定供給を実現するためです。

というのも、どの発電方法にも何らかのデメリットがあります。そのため、このようなデメリットを相殺するために、さまざまな発電方法が採用されているのです。

このように、日本には電力供給を安定させるためのさまざまな仕組みがあります。

そこで、ここでは日本の電力供給を支えている制度や仕組みについて解説していきます。

電力自由化による供給システムの変更

2016年の電力自由化によって、一般消費者が電力会社を自由に選べるようになりました。また、この自由化では、地域電力会社の「送配電部門」が切り離されて別会社化することが決まりました。

電力自由化以前、東京電力や関西電力などの地域電力会社は、「発電」「送電」「配電」「小売」の4つの事業をそれぞれ1社で行っていました。ただ、この体制のまま電力小売を自由化すると、地域電力会社が優位になり、新電力会社が電力業界に参入しづらくなります。

というのも、新電力会社は、地域電力会社が持つ配電設備を利用して各消費者に電力を届けます。このとき、新電力会社は地域電力会社に「託送料金」という利用料を支払う必要があります。

地域電力会社にとって、新電力会社は顧客を奪い合うライバルです。そのため、地域電力会社の小売部門と送配電部門が同じ会社だと、新電力会社にとって不利な条件を出して有利に経営を進めやすくなります。

このようなことを防ぐために、2013年に閣議決定となった「電力システムに関する改革方針」では、電力事業を「発電部門」「送配電部門」「小売部門」の3つに分類し直して、2020年までに送配電部門を別会社化することとなりました。

これによって、新電力会社と地域電力会社が対等な立場となります。そして、地域電力会社の送配電部門が中立な立場となることで、電力自由化によって開放された発電や電力小売の市場が活性化して価格が適正化したり消費者を取り巻く電力環境が改善されたりするといわれています。

世帯に電気が届くまでの流れ

前述のように、2016年の電力自由化によって一般消費者が自由に電力会社を選べるようになりました。これによって、消費者は価格や発電方法、会社方針などのさまざまな価値観によって電力会社を選択できるようになりました。

ただ、発電方法で電力会社を選んでも、その発電方法による電力のみが世帯に届くということはありません。前述のように、発電された電力は地域電力会社の所持する送配電設備を通ります。このような送配電設備は共通のものであるため、さまざまな発電所からの電気が混ざってから自宅に電気が届くことになります。

また、電気には溜めておくことができないという性質があります。そのため、電力会社は消費者が使用した電力を一定時間ごとに測定して、その分だけの電力を調達して共通の送配電網に流すことになっています。つまり、契約している電力会社が送電網に電気を流すのは、消費者が電気を使った後ということになります。

さらに、このような仕組みにおいて、何らかの理由によって電力会社の電力調達量が足りないときは、地域電力会社における送配電部門の指示によって別の電力会社が不足分を補うことになっています。そのため、世帯で使用している電気は、契約している電力会社が調達したものとは限らないのです。

このようにしてさまざまな会社が発電した電気が自宅に届くと、1社が電力調達できなくても停電することがありません。そのため、これらの仕組みは、消費者が安定して電気を使うために役立っているといえます。

電力広域的運営推進機関の設立

電力自由化によって、「電力広域的運営推進機関」という組織が設立されました。この組織は通称「広域機関」と呼ばれており、広範囲の送配電網の整備や緊急時の安定した電力供給を実現する目的で設立されました。

2011年の東日本大震災による原発事故の後、別の地域では電力供給が足りているにも関わらず、関東で停電が起こったことが問題となりました。このような停電は、電力会社同士の協力や全体の電力供給量を調整する組織があれば解決できたといわれています。

広域機関は、災害などの緊急時に電力が安定して供給されるように、別の地域から電力を調達したりや発電量の増加などを図ったりするように指示を出して電力の需給調整を行います。

また、広域機関のように、利益を目的としない組織が送配電網の整備に関わることで、地方などへの安定した電力供給が保たれるとされています。というのも、電力自由化によって地域電力会社が新電力会社と競い合うようになると、利益を追求した経営を行わざるを得なくなります。

すると、地域電力会社は地方への電力安定供給よりも、利益を上げることに重点を起きやすくなります。このようなことが起こると、世帯数の少ない地方の消費者が安心して電気を使えない状況になりかねません。

このようなことから、広域機関は災害時や電力自由化以降も日本全国への電力安定供給を維持するために重要な働きを担っているといえます。

資源エネルギー庁の主導による電源バランス

電力自由化によって、多くの新電力会社が業界に参入しました。ただ、電力自由化以前、地域電力会社は電気を使うすべての消費者に安定した電力を供給してきました。そのため、地域電力会社の電力供給能力は、新電力会社に比べてかなり高いです。

このような電力の安定供給は、さまざまな発電方法を採用したバランスの良い需給システムによるものです。このようなシステムは、資源エネルギー庁の主導によって行われています。

前述のように、電気は溜めておくことができません。また、電力の需要は時間帯や季節によって大きく異なります。そのため、このような電力需要量の変化に対応するために、発電方法の稼動割合を「ベースロード電源」「ミドル電源」「ピーク電源」の3つに分けて管理しています。電源とは、発電のためのエネルギー源のことです。例えば、水力発電の電源は水力ということになります。

以下に、これら3種類の電源内容について解説していきます。

ベースロード電源

ベースロード電源とは、日本全国の電力供給の基礎を支える電源です。そのため、ベースロード電源であるためには、安価で安定した発電ができる電源である必要があります。そして、ベースロード電源に採用されている電源には、原子力や石炭による火力、流れ込み式による水力などがあります。

1950年代までは、日本で発電される電力のほとんどが水力によるものでした。水力発電は、水が高い所から低い所へ流れる力を利用して発電します。そのため、山や川が多い日本では利用しやすい発電方法です。

水力発電のうち「流れ込み式」では、河川を利用して発電を行います。これは、川の流れる勢いでタービンを回して電力を得る方法です。

流れ込み式の水力発電では、発電のために必要な人手や設備が少なくて済みます。また、川が流れていれば発電できるため、この発電方法による電力は安価なものとなります。このような特長から、流れ込み式による水力はベースロード電源として採用されています。

また、ベースロード電源の1つである原子力による発電は、核の分裂反応を利用したものです。原子力発電は、少ない原料が長く反応し続けるため、発電コストが安く大量の電力を供給できるという特長があります。そのため、電力を安定供給しやすいことから、ベースロード電源に含まれています。

ただ、2011年の原発事故によって、原子力発電所の稼動を見直す動きが強くなりました。そのため、2011年以降の電源構成比における原子力発電の割合は、かなり低い状態が続いています。

また、ベースロード電源には石炭による火力発電も採用されています。日本の石炭鉱山はほとんど閉鎖しているため、「石炭は過去のエネルギー」という印象を持っている人は多いです。ただ実際には、石炭による発電は日本の総発電電力量の約2割を担っています。

このような火力発電のための石炭は、主に海外から輸入されています。また、世界における石炭の可採埋蔵量は約8500億トンを超えるといわれており、130年以上は安定して採取することができます。このようなことから、石炭による発電は安価で安定性に優れているため、ベースロード電源に採用されています。

このように、ベースロード電源には、低コストで季節や時間帯に関わらず安定した電力を発電できる電源が採用されています。そのため、ベースロード電源は日本の電力供給の柱といえます。

ミドル電源

ミドル電源は、発電するためのコストがベースロード電源よりも高めです。一方で、発電量が調節できないベースロード電源に対して、ミドル電源は電力の需要量に応じて発電量を調整することができます。

ミドル電源には、天然ガスによる火力発電などが採用されています。火力発電には、燃やす燃料の量を変えることによって出力の調整が容易に行えるという特長があります。そのため、火力発電は需要に応じた発電量の調整に利用されています。

また、火力発電のうち、天然ガスによるものは発電技術の進歩によってコストがかなり抑えられるようになりました。さらに、天然ガスは石油に比べて埋蔵量が多く、価格も安めで推移しています。

このようなことから、安価に発電量を調整するために、ミドル電源として天然ガスによる火力発電が採用されています。

ピーク電源

ピーク電源は、発電コストが他の電源に比べて高価です。一方で、発電量の調整が容易で、急な電力需要にも対応できるという特長があります。

ピーク電源には、石油による火力発電などが採用されています。前述のように、火力発電は発電量の調整が容易に行なえます。ただ、日本では石油の調達を完全に輸入に頼っています。そのため、石油による電力の価格は、海外情勢の影響を強く受けることになります。

また、新興国の発展によって世界的な石油の需要量は増える一方であるのに対して、採掘できる量には限りがあります。そのため、今後価格の大幅な下落は難しいといえます。このようなことから、石油による発電は、ミドル電源までの発電量で足りなくなったときに稼動するピーク電源として採用されています。

このように、地域電力会社はさまざまな発電方法を組み合わせて採用することによって、それぞれの電源の特性を活かして電力の需要量変化に対応しています。

そして、普段何気なく使っている電気は、これまでに述べたようなさまざまなセーフティネットに支えられることによって、安定したものとなっているのです。